「Excuse me. By any chance do you have...」
(「すいません、もしかしてお持ちでないですか、、、」)
ガシャン!!!!!
「Oh, shit!」
(「何てことだ!」)
時間が止まったかのように凍りつく人々。
一方で、何かに弾かれたように音の発生源に走り出す数名の人たち。
僕は一瞬にして事象は理解したが、
矛盾するように、事態を飲み込めずに他の多くの人と同様に数秒間立ち尽くしていた。
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西に西に向かっていた。
ヒューストン、ダラス、サンアントニオ、そして州都オースティン。
テキサスの大都市は中部から東部に集中している。
西部の田舎町で行われるマラソン大会に参加する者たちは、
多くがロングドライブを強いられる。
僕も6時間以上の道のりを大きな大地と地平線、ずっと変わらない景色の中、
時速80マイル(約130km)で 車を走らせていた。
(まるでCGのような、青のグラデーションで雲一つない、これがテキサスの空。)
町おこしのために始まったマラソン大会も今年で16回目になるという。
年々人が集まり、今では10を超える州から、
地元民も含めて500名近いランナーが集まる。
近隣にビッグベンド国立公園があり、その経済圏とはいえ、
約100マイル(160km)離れている。
人口は参加ランナー数より少ないという、本当に何もないテキサスの片田舎、
そんな小さな町最大のイベントだ。
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ここ2-3週間は仕事が忙しく、特に今週は西海岸カリフォルニアへの緊急出張も入り、
自宅に戻ったのは前日夕方。
今回は重要案件のためアフターの宴会も夜深くなり、
疲れはそれほど感じなかったが、そこはかとなくだるさもあり、
体の芯でなにかがくすぶっている。
万全とは言い切れない微妙なコンディションだった。
朝9時過ぎに自宅を出て、町に着いたのは16時少し前。
16時開始のゼッケン引き取りをすませ、宿のある隣町までまた1時間のドライブ。
(小さな町なので宿泊施設が限られるのだ。)
この移動のルート、ハイウェイ、がマラソンコースで、途中スタート地点で停車し記念撮影。
ホテルにチェックインし少し休憩した後、主催者開催の「フリーパスタディナー」へ。
田舎の大会だけに、エキスポのような催しはないが、こういうところは手厚い。
あまり期待していなかったが、アメリカではめったにお目に(お口に?)かかれない、
固めに茹で上がったパスタに、思いのほか食が進む。
単純に、忙しくて茹で時間が短かっただけのような気もするが。
しっかりカーボローディング。(注:自分と子どもの二皿)
ホテルに戻り、浅い湯船に何とかお湯を張ってつかり、
子ども達と一緒に早めにベッドに入る。
しかし、なかなか寝付けない。
時計や携帯の光を見てはいけないと、目はつむっていたが、脳が活動をやめない。
すやすや眠る家族の隣で、一人眠りを妨げる思考と格闘し、時間が過ぎていった。
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